ラーメン屋の親父から聞いたウンチク

私には行きつけの飲食店があるのですが、そこはラーメン屋です。川崎のとある郊外にある店で、辺鄙な場所にありながらも、なかなかのこだわりの一杯を供するということで、知る人ぞ知る名店と言われています。ラーメンの種類は3つ、醤油ととんこつと味噌です。普通、何種類ものラーメンを並べる店は信用ならないものですが、こちらは例外中の例外。どれを食べても一級品の美味しさです。とりわけ、九州は佐賀県の麦味噌を使用した味噌ラーメンは、ちょっと他では味わえない逸品です。甘い麦味噌と魚介系でとられたダシとの調和が素晴らしく、私にとってはナンバー1の味噌ラーメンと言えるかもしれません。透明な和ダシをベースとした醤油ラーメン、濃厚な豚骨を煮だした豚骨ラーメンもまた絶品であって、このラーメン屋から離れたくがないために、私は何年ものあいだ、通勤には不便なこの土地に住みつづける羽目になっています。

ところで、そちらのラーメン屋の親父から教わったウンチクがあります。ラーメン屋の店主がどのようにして客を見ているかという判断基準の話です。彼によると、所見の店で大盛りを頼むのは素人の証だそうです。というのも、スープと麺の分量の比率は繊細なものらしく、麺量を増やすとバランスが崩れてしまいかねないからだとか。そのため、ラーメン通は初めて訪れる店では、その店のベストを味わうためにも、普通盛りを頼むのが乙なことだということです。同じように、麺の固め・柔らかめを頼むのはもってのほかだとか。近頃は麺固めで頼むラーメン通気取りが多いが、麺の美味しさを味わう茹で加減はつくり手が一番よく知っているものであり、それに逆らってはならないと息巻くのです。いやはや、このように書くと、まるで彼が昨今流行りの頑固職人のようですが、そうではありません。普段はとても物静かな方で、客に対しても穏やかな礼節で応じる人です。このときは、私が常連客で、たまたま店内に客がいなかったため、普段から感じていた不満が栓を抜いたように湧き出てしまったのでしょう。いささか驚きましたが、ラーメン屋の本音が聞けて、私にとってはむしろ愉快な経験となりました。

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